土地先行融資の際の留意点
住宅ローンを利用する際に、新築建売住宅や中古住宅の購入など、土地と建物を併せて取得し、その資金を一括して借り入れるという場合であれば問題ないのですが、「注文住宅を建築する前」に、土地を取得する目的で先行して土地分の「分割実行」、または「つなぎ融資」という形をとって必要資金を調達するケースがあります。
その際に、取得しようとする土地の上に、人が住む目的以外の建物や空き家が残ったまま、ということがことがあります。この建物の扱いについて、金融機関と認識の違いが起こりやすいため、注意が必要です。
分割融資
分割融資とは、土地代金と建築資金の融資をまとめた1本の契約で締結し、土地購入時と建築完成時に分けて実行する場合や、土地代金の融資と建物完成時の融資の2本立てで融資する場合などがあります。金融機関によってその形態は様々で、実行の回数や適用金利、担保設定の有無、返済のタイミングなどに違いがあります。
つなぎ融資
土地代金に加えて建築資金についても、頭金、中間金、受渡時の最終代金などを分割で支払う請負契約にしている場合、つなぎ融資という形でその資金を調達することもあります。土地代金や建築資金のローンが実行される前に必要となる諸費用などについて、自身で立て替える資金的な余裕があれば良いのですが、一般的にはそこまで資金の余裕がないことが多いため、先行してこれらの融資形態を利用することになります。
つなぎ融資も、金融機関によって扱いは様々で、土地代金は100%先行して融資してくれるところが大半ですが、着工金・中間金等の融資限度は請負金額の30%までとか、40%まで可能(合わせて70%~80%が一般的)とか、それぞれ条件の違いがあります。
融資する時点で既存建物が存在する場合
土地取得資金をこれらの分割融資やつなぎ融資で賄おうとする際、または既存の建物を解体して建て替えようとする際に、原則的には、付属建物も含めて全て解体し、更地になっていることが確認できなければなりません。
仮に、つなぎ融資実行時点で、古家や一部の建物が残ってしまう場合、必要となる手続きがあります。
土地代金決済時に併せて所有権の移転・担保設定が必要になる
問題になりやすいのは、建物が登記されておらず、かつ、解体することを前提としている場合です。この場合、土地代金の決済に伴って分割融資をするには、一旦建物を登記(表示登記+所有権移転登記)しなければならない点です。
分割融資・つなぎ融資の段階では抵当権を設定することは稀ですが、金融機関の意向で設定を要する場合は土地·建物の共同担保となります。
土地を購入後、すぐに建物を取り壊す予定なのに、「壊すものに余計な抵当権を付けるのはムダ」と考えがちですが、この建物を残したまま土地を売買契約しても、建物の所有者に一時的に法定地上権が発生するおそれがあるからです。
万が一そのようなことが起こると、金融機関の担保としては底地部分だけとなり、評価が著しく低下してしまうことに加え、新たな建物を建てられなくなってしまい、大きなリスクを負うことになるので、古家を無担保で残すことは容認されません。
分割・つなぎ融資に必要なそれぞれの信用力
金融機関は、土地のみの担保を認めるには、借入人の信用状況や建築計画の確実性、業者の信用等を総合的に判断します。さらに、建築資金の分割実行を依頼された場合、建物が完成するまでは担保が付けられないため、請負業者の完工能力、土地の担保余力なども総合的に判断することになります。
実際、建築資金を先取りして業者が倒産する事件が発生していますから、建物についての融資は完成後に実行することを基本とすることは、いうまでもありません。
分割やつなぎの融資とは言え、古家付きの場合を含め、金融機関としてもお客様のリスクが高まるような計画には慎重にならざるを得ないことに、留意が必要です。
法定地上権とは
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属している場合に、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときに当該建物に成立する地上権(第388条前段)。約定地上権とは異なり当事者間の合意による設定ではなく法律の規定によって当然に生じます。