企業経営者の方が住宅ローンを組むにあたって、フラット35を選択するケースが多い理由は、一般金融機関とフラット35では明確な審査方法の違いがあるためです。
企業経営者の方にとってメリットがあるポイントは、大きく分けて下記の3点になります。
企業経営者の方にとってのメリット3点
メリット1. 事業年数の指定がない
給与所得者の審査と同様に、直近1年間の収入で返済負担率が判断されます。
メリット2. 企業の借入内容は経営者個人と完全分離
企業が事業資金として借入したものは経営者個人の信用情報に影響しません。
メリット3. 企業決算書の提出は(原則)不要
企業の収支が経営者個人の審査に影響することはありません。
銀行系金融機関の審査態勢
住宅ローンの申込人が企業の経営者等の場合は、経営している事業の信用度も調査されます。大手企業はともかく中小零細企業、中でも急成長している企業については、経営者の資質が慎重に見極められるとともに、企業内容もチェックされます。
少なくとも、過去3期間の決算書や確定申告書が要求されますし、売上状況の推移により業績の安定性を見たり、貸借対照表から資金の調達運用が適正に行われているかも確認されます。
企業オーナーの給与
企業オーナーとは、会社経営をしていて、所得が給与所得になっている人のことです。ここでは、大企業の社長ではなく、会社の株式の大半を所有している、いわゆる「オーナー経営者」を指します。
企業オーナーの収入は、もちろん給与になるわけですが、その給与の源泉は、自ら経営する会社の利益から支払われます。つまり企業が安定した収益を確保していなければ、自分の給与は得られないわけです。
企業オーナーの場合、給与を確認する源泉徴収票等の書類の他に、経営する企業の業績を把握するため、個人事業主と同様に、確定申告書と納税証明書各3期分の提出を受けて検討することになります。
一般の従業員にはそこまでの書類を要求しませんので、経営者だけに要求するのは公平を欠くと思われがちですが、一般従業員は会社の業績によって給与が大幅に上下することはありませんし、仮に会社が倒産したとしても、雇用保険である程度守られており、転職することもできます。
これに対し、経営者の給与は会社の業績にかなり左右され、場合によっては給与が相当減額にになる可能性もあります。また、会社が潰れたときも雇用保険はありませんし、事業性融資の保証人となっていることも多いでしょう。従って、経営する会社の内容を把握することが大変参考になります。
P/L 損益計算書
決算書や確定申告書では、損益計算書が黒字であること、3期分の決算が安定した業績推移を示していることを確認します。
B/S 貸借対照表
貸借対照表では、損益計算の売上・仕入の状況から、資産勘定では売掛金や受取手形、在庫の残高、負債勘定では買掛金、支払手形の残高がそれぞれ何ヶ月分あるかを計算し、月商に比して異常な推移を見せていないかをチェックします。運転資金をどう調達しているかを見るためです。
C/F キャッシュフロー
売掛金が異常に増加している場合、回収が困難になっている販売先が発生していて回収条件が悪くなっていることもあるため、注意が必要です。それに伴い借入が増加していると、金利負担や返済負担が増加しますから、業績の先行きについてはよく聴き取って、販売先の動向にも留意します。
不健全資産に注意
資産勘定で気を付けるのは、貸付金、仮払金や未収金などです。これらの金額が大きい時は、内容を十分に調べる必要があります。はっきりしない資金使途で、過剰な投資や回収不能なものがここに入っていることがあります。
投資勘定でも、長期貸付金、関係会社貸付金など、相手先の内容によっては固定化しているものもありますから、要注意です。
こうしたところから資金繰りが破綻すると、一見自己資本が充実しているように見えた会社も、一気に債務超過に転じることがあります。
普通に考えて、会社の業績が悪いのに、無理して自分の住宅を買おうなどと思う経営者はいないはずです。決算の内容が悪い会社の経営者が住宅ローンを申し込む時は、何か別の意図があるかも知れません。
フラット35ならではの審査基準
フラット35の場合、企業オーナーの審査にあたって、会社から源泉徴収として給与が支給されている場合は、一般の従業員同様、源泉徴収票直近1年分、課税証明書、または住民税決定通知書直近2期分の提出で済みます。企業の決算書は要求されません。
極端な話でいうと、会社決算が赤字でも、本人の収入が相応であれば、それに沿った審査となります。