審査を行っているのは金融機関ではなく保証会社
住宅ローンを申し込んだ場合、実際には金融機関が審査をしているのではなく、金融機関を通じて保証会社が審査を行っています。事前審査よりも本審査の方が厳格な審査になるため、事前審査では審査を通過したのに本審査では融資額を減額されたり、断られたりすることもあります。ある金融機関で希望額に届かない場合でも他の金融機関では大丈夫な場合もあります。
保証会社の役目は申込人の返済能力を審査して保証料を算出し、申込人が返済不能に陥った場合には保証会社が残債を金融機関に立て替え払いすることです。
その後は保証会社が申込人に対して督促したり、担保である物件の処分を行います。申込人は保証会社をつけることで不測の時に債務がゼロになる訳ではなく、返済先が金融機関から保証会社に変わるだけと理解しておく必要があります。
勤続年数が短い場合、ローン審査は通る?
住宅ローンを申し込んだ際、借りられるかどうか決定する条件の第一は、収入の安定性です。従来はほとんどの金融機関の審査基準は勤続3年以上を前提としていました。勤続年数は長いほうが返済能力は高いと評価され審査に通りやすく、転職歴が多かったり転職の予定がある場合は審査が受けられないのが原則でした。
近年は転職することも多くなり、必ずしも収入が不安定になる訳でもありませんので金融機関によっては勤続年数1年未満でも審査が通る可能性があります。そのためには数か月分の給与明細を提出して転職後、収入が上がっている事をPRする必要があります。
借入額を決定する条件として、勤務先は中小企業より大企業、公務員などの方が有利ということ、資産は当然ある方が有利であることが挙げられます。
年収を元に借入可能額を算出する方法
住宅ローンをいくら借りられるか算出するのに一定の基準があり、それを返済負担率(返済比率)と呼んでいます。返済負担率は各金融機関によって基準が異なりますが、例えば年収300万円未満の方は返済負担率25%、300万円以上400万円未満の方は30%、400万円以上700万円未満の方は35%、700万円以上の方は40%というように決まっています。
年収 | 返済負担率 |
---|---|
300万円未満 | 25% |
300万円以上400万円未満 | 30% |
400万円以上700万円未満 | 35% |
700万円以上 | 40% |
この場合、年収500万円の方は、(年収500万円×返済負担率35%)÷12=14.5万円(毎月の返済可能額)となります。
仮に全期間固定金利1.3%で35年間の元利均等返済の住宅ローンを組む場合、借入可能額は4,890万円となります。
非正規社員でもローンは可能?
従来、住宅ローンは正規社員であることが借入の条件でしたが、近年は働き方が多様化しているため非正規社員でもローンが通るようになりました。非正規社員「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」の方も勤続年数が2~3年以上あれば審査の対象になりますが、年収を80%程度で審査をする金融機関もあります。
会社で加入している社会保険が国民健康保険よりも協会けんぽや健保組合の方が審査は通りやすくなります。
また、派遣先は中小企業よりも大企業の方が有利と言われております。
自営業者の所得計算に注意
住宅ローンを申し込む場合、会社員の方の収入は税込収入で判断されます。一方、自営業者の方は収入から経費を差し引いた「所得」で判断されます。
また、事業開始から3年経過していることが前提で、直近3期分の確定申告書、納税証明書を提出する必要があります。自営業者は過去3年分の所得を審査されるのです。事業が好調であっても節税対策をして所得を少なめにして申告をしていると審査では不利になってしまいます。
保証料は収入の安定さに応じて変わる
近年では働き方が多様化しているために、昔のように勤続3年以上の正規社員が必須条件ではなくなってきています。しかしながら保証会社から見た場合、非正規社員よりは正規社員。中小企業よりは大企業。勤続年数が短いよりは長く。給料に占める歩合給が多いよりは少なく、といった様に収入が安定する要素が多いほど、保証料は少なくなります。
保証料は保証会社がリスクごとに区分けをしている表に基づき算出されますが、リスクが小さい方と大きい方とでは4倍以上の差があります。
また、保証料の払い方は一括払いと、毎月返済額に上乗せする分割払いがありますが、当然一括払いの方が少なく済みます。
「フラット35」の審査基準について
これまで記してきた内容は民間金融機関で申込みした場合の審査の基準です。
公的ローンの「フラット35」は、民間金融機関よりも基準が緩和されているため下記のようなメリットがあります。
- 雇用形態を条件にしていない。審査に正規社員、非正規社員の区別を設けていません。パートやアルバイトでも2年以上の勤続実績があれば利用できます。
- 自営業者の年収は「前年の所得」で判断。通常3期分の所得で判定される所得も1期分の確定申告書で判断されます。
- 保証料が不要。フラット35は保証料が一切不要です。年収に応じた返済負担率によって借入可能額が算出されるので大企業と中小企業といった職業による区別がありません。
この違いは公的ローンの有利な点と言えます。