繰り上げ返済とは
住宅ローンの毎月の返済額とは別に、元金の一部を返済することを「繰り上げ返済」といいます。
元金が減るとそれに伴う支払い利息も減り、返済額の総額も当初予定額より早く減っていきます。繰り上げ返済には2つのタイプがあり、それぞれに特徴があります。
期間短縮型
期間短縮型とは毎月の返済額を変えずに、残りの返済期間を短縮する方法です。ローンを早く返し終えたい人などにおすすめです。
【事例】
借入金額:3000万円
全期間固定金利:1.3%
返済期間:35年間
返済方法:元利均等返済
※100万円の繰り上げ返済を「3年後」「10年後」「20年後」にした場合の比較
繰り上げなし | 3年後に繰り上げ | 10年後に繰り上げ | 20年後に繰り上げ | |
---|---|---|---|---|
返済期間 | 35年 | 33年7カ月 | 35年9カ月 | 33年10カ月 |
毎月返済額 | 88,944円 | 88,944円 | 88,944円 | 88,944円 |
総返済額 | 約3,736万円 | 約3,685万円 | 約3,699万円 | 約3,714万円 |
利息減少額 | – | 約51万円 | 約36万円 | 約21万円 |
期間短縮型の繰り上げ返済をした場合は、毎月の返済額は変わらずに返済期間が短くなります。
【3年後に繰り上げ返済をした場合】
返済期間が1年5ヵ月短くなり、総返済額は約51万円少なくなります。
【10年後に繰り上げ返済をした場合】
返済期間が1年3ヵ月短くなり、総返済額は約36万円少なくなります。
【20年後に繰り上げ返済をした場合】
返済期間が1年2ヵ月短くなり、総返済額は約21万円少なくなります。
このように、返済期間の早いうちに繰り上げ返済をした方が有利となります。
返済額軽減型
返済額軽減型は毎月の返済額を削減し、返済期間を変えない方法です。子供の教育費等の負担増に備えたい人などにおすすめです。
【事例】
借入金額:3000万円
全期間固定金利:1.3%
返済期間:35年間
返済方法:元利均等返済
※100万円の繰り上げ返済を「3年後」「10年後」「20年後」にした場合の比較
繰り上げなし | 3年後に繰り上げ | 10年後に繰り上げ | 20年後に繰り上げ | |
---|---|---|---|---|
返済期間 | 35年 | 35年 | 35年 | 35年 |
毎月返済額 | 88,944円 | 85,760円 | 85,038円 | 82,827円 |
総返済額 | 約3,736万円 | 約3,713万円 | 約3,718万円 | 約3,726万円 |
利息減少額 | – | 約22万円 | 約17万円 | 約10万円 |
返済額軽減型の繰り上げ返済をした場合は、返済期間は変わらずに毎月の返済額が少なくなります。
【3年後に繰り上げ返済をした場合】
毎月の返済額が3,184円少なくなり、総返済額は約22万円少なくなります。
【10年後に繰り上げ返済をした場合】
毎月の返済額が3,906円少なくなり、総返済額は約17万円少なくなります。
【20年後に繰り上げ返済をした場合】
毎月の返済額が6,117円少なくなり、総返済額は約10万円少なくなります。
返済額軽減型の繰り上げ返済も、返済期間の早いうちに繰り上げ返済をした方が有利となります。
「期間短縮型」と「返済額軽減型」どちらがお得?
上記のように、繰り上げ返済をする場合は期間短縮型の方が利息軽減効果は大きくなり、なるべく早い時期に繰り上げ返済をする方が利息軽減効果は大きくなります。
さらに、まとめて繰り上げ返済するよりも、少しずつでも定期的に繰り上げ返済した方が利息の軽減効果は大きくなります。
例えば、10年後に300万円まとめて繰り上げ返済するよりも、借入当初から毎年1回ずつ30万円を10年間繰り上げ返済した方が有利となります。借入当初から少しずつでも元本を減らしていった方が、利息軽減効果は高くなるのです。
繰り上げ返済をする場合の留意事項
繰り上げ返済できる金額の単位や規程は金融機関によって異なりますので事前に確認しておくことが大切です。
民間金融機関では1万円から繰り上げ返済できる代わりに事務手数料がかかる場合があります。住宅金融支援機構「フラット35」の場合は、インターネットを活用した返済方法を取り入れており、10万円以上であれば手数料無料で繰り上げ返済ができます。
繰り上げ返済をする際もう一つ注意をしておきたいのは、住宅ローン控除が使えなくなる場合です。控除の条件は返済期間が10年以上あることですから、繰り上げ返済をどんどんしていき、残り期間が10年を切った場合は住宅ローン控除が受けられないというケースも考えられます。
住宅ローン控除のメリットを享受することを重視する場合は、繰り上げ返済を住宅ローン控除の適用期間後にするか、もしくは期間短縮しない「返済額軽減型」の繰り上げ返済を選択する等、検討が必要です。
まとめ
繰り上げ返済をする際は、「なるべく早めに」「期間短縮型の返済」を選択することで返済額の総額は少なくすることはできます。
ただし、住宅ローン控除の減税メリットに与える影響や、繰り上げ返済する際の事務手数料も考慮に入れることが必要です。そしてライフプランを立て、今現在の手元資金を繰り上げ返済に充てても大丈夫か、しっかりと考えて実行することが大切です。